日本酒って日本の伝統的なお酒にも関わらず、その作り方を詳しく知っている方は意外と少ないですよね。
それは日本酒の醸造方法が複雑で、わかりにくいからです。
しかし、日本酒は、他のお酒の作り方にはない、日本酒独自の方法で作られているんです!日本酒の作り方を知れば、より一層日本酒を美味しく飲めるはず!
日本酒初心者さんの為に図解で日本酒の作り方を紹介していきます。日本酒の作り方の基礎知識がこのページを読むだけで理解できますよ。
日本酒の作り方 全12行程はこうだ!
- 精米(せいまい)
- 洗米・浸漬(せんまい・しんせき)
- 蒸米(むしまい)
- 麹づくり(こうじづくり)
- 酒母づくり(しゅぼづくり)
- 仕込み(もろみ作り)
- 搾り(しぼり)
- 濾過(ろか)
- 火入れ(ひいれ)
- 貯蔵(ちょぞう)
- 調合(ちょうごう)
- 瓶詰め(びんづめ)
精米(せいまい)
最初の工程で、お米を削っていきます。
なぜ削るかと言うと、米の外側には脂質やタンパク質があり、それらが多いと雑味を感じるからです。
お米を削ることを、日本酒の工程では「磨く」と言います。
私たちが食べるご飯は白米がほとんどだと思いますが、これも玄米から少し削ったもの。
玄米を食べたことがある方はわかると思いますが、独特の風味がありますよね。
もしも、お米を削らずに日本酒を作ろうとすると、玄米と白米の違いと同じように、香りがきつくなったり、人によっては苦味を感じたりします。つまり独特の味わいになるのです。
これは「雑味」と言われており、繊細な味の日本酒にとって、一般的に必要ないものにないものです。
日本酒はさらに雑味をなくすために、通常の白米よりも磨きをかけます。日本酒のラベルを見てみると、どれだけ削ってあるか書いてあるものがありますよ。
「○%精米」のような表記を精米歩合といって、玄米に対して何%のお米になっているかを表しています。
つまり、60%精米の場合だと、40%を削ったということです。
平たくいうと、精米歩合の数字が小さければ小さいほどたくさん磨いたということになります。白米は約90%精米なのに対し、日本酒は70%以上を削るのが一般的なことを考えると、日本酒がいかに味の繊細さを重視しているのかが分かります。
お米の奥深さを楽しんでもらうために、あえて精米せずに造られた日本酒もあるのですが、クセが強く、日本酒を極めた方向けです。たくさん磨かれた日本酒の方がスッキリとしていて、飲みやすいので、日本酒初心者さんは選び方の参考にしてみてください。
まとめると、日本酒は、雑味を感じるお米の外側の成分が、通常のご飯よりも味に反映されるため、白米よりさらに磨き、味を調節するということです。
洗米・浸漬(せんまい・しんせき)
精米が終わると、お米を水洗いし、水に浸けます。
磨いたあとのお米は削りカスが付いているため、水で洗い流すのです。水に漬けるのは水分をお米に吸収させるためです。
私たちが食べているご飯も、芯が残らないように一定時間水に浸してから炊飯しますよね。これと同じ理屈です。
酒米の場合は、次の工程でお米を蒸すため、水分を吸収させます。ちなみに、吸水時間もご飯と比べると日本酒造りはもっと繊細です。
- 吸水時間が短いと水分不足のために充分に米が蒸されない
- 吸水時間が長いともろみの発酵過程で溶けすぎてしまう
以上のように、短くても長くても失敗してしまうのです。
それだけでなく、美味しい日本酒造りのための最適な吸水時間は、常に一定ではない点も、日本酒造りの奥深いポイントです。気温が低ければ水はしみ込みにくくなりますし、酒米の品種によって水分の吸収できる量が違うのです。
つまり、その時々の気候・温度や、酒米の品種によって浸漬時間を秒単位で変えて、適量の水を吸収させていきます。
蒸米(むしまい)
適量の水を含んだお米を甑(こしき)という大きな釜で蒸していきます。
こちらが甑で蒸しているところ。
蒸すことで、このあとの工程である「麹菌」の作用を受けやすくなります。「炊く」のではなく、「蒸す」のです。
炊き立てのご飯を想像してください。ご飯を「炊く」とふっくらモチモチになりますよね。ご飯の場合はそれが美味しいのですが、日本酒づくりの場合は、モチモチと粘り気があると仕込む時に必要以上に米が溶けてしまって雑味が出てしまうのです。
そのため、炊くのではなく蒸すことで、日本酒づくりに必要な分のみの水分を含ませます。
これが蒸米です。手にひっつかない程度の固さになります。
蒸すことで、ある程度固さを保ってくれるので、日本酒造りには蒸すのが最適なんですよ。
麹づくり(こうじづくり)
次に、蒸米を麹室(こうじむろ)に移動させます。
麹室は35℃ほどに保温されていて、この中で蒸米を広げて麹菌をふりかけ、繁殖させていくのです。
このように麹菌を増やしたものを「麹」とよび、日本酒には欠かせないものとなります。
麹にはお米のデンプンをブドウ糖に変える役割があります。このブドウ糖がアルコール発酵することで、お酒になるのです。
例えば、ワインの場合。原料のブドウの主な成分はブドウ糖です。ざっくりと言えば、ブドウ糖に水を入れて時間が経つとアルコール発酵します。
しかし、日本酒の原料であるお米の成分はデンプン。デンプンは水を加えるだけでは、アルコール発酵できないのです。なので、まずデンプンをブドウ糖に変える必要があります。
それが麹の役割なのです。
お米をブドウ糖へと分解する麹は、日本酒造りには欠かせませんね。
酒母づくり(しゅぼづくり)
次に、麹と水を混ぜ合わせたものに、酵母、蒸米を加え発酵させます。
そうすることで酵母がたくさん増えるのです。酵母がたくさん増えたものを酒母といいます。
酵母にはブドウ糖をアルコールに変える役割があり、酵母が大量になければ日本酒はできません。
つまり、アルコール発酵させるために、酵母を増やして酒母を作るのです。
酵母とは微生物の一種。英語でいうと「イースト」。その名称の方が、馴染みがあるかもしれませんね。パンを膨らませる役割の「イースト菌」も酵母のひとつです。
酒母をつくるときも、時間が経つにつれ、表面が膨らんできます。
さらに時間が経つとプツプツと泡が。
また、酵母には香りを出す力もあり、嗅ぐだけで飲んだ気分に…。
このように、酵母をたくさん培養した酒母が、アルコールをつくっていくのです。「お酒の母」と書きますが、読んで字の如く「日本酒のもと」となります。
仕込み(もろみ作り)
酒母を大きなタンクに移し、麹・蒸米・水を3回に分けて加え、もろみを作ります。この作業を「三段仕込み」もしくは「仕込み」と呼びます。
なぜ分けて加えるかというと、全量を一気に入れ発酵させると、酵母菌の増殖が間に合わなくなるからです。
タンクの中では、以下のような反応が起こっています。
- 麹菌がお米をブドウ糖に分解
- 酵母がブドウ糖からアルコールへ分解
つまり2つの反応が同時に起こっているということです。この醸造方法は、他のお酒にはない日本酒独特の方法。
発酵が進むと、酒母のときと同じようにプツプツと泡がでてきます。
約3週間から1カ月ほどじっくり発酵したものを「もろみ」といい、いよいよ日本酒の原型がこの段階で出来上がります。
搾り(しぼり)
次にもろみに圧力をかけて、濾して(こして)いきます。これが「搾り」です。
搾ることで、水分と固形物に分かれます。簡単に言うと、「日本酒」と「酒粕」に分けるということです。搾り方も酒蔵によって様々なんですよ。
- 袋に入れて重力で搾る方法
- 自動圧搾ろ過機という機械で搾る方法
この2つの方法がありますが、最近は後者の機械で搾る方法が主流になっています。搾る圧力によってもお酒の味わいが変わるので、これもまたいろんな酒蔵の個性が出る作業のひとつです。
濾過(ろか)
次に、搾りを終えた日本酒を濾過します。
搾りの工程は大きな固まりと水分を分ける作業でしたが、この工程では水分に含まれている、分けきれなかった小さな固形物を取り除いていく作業を行うのです。
濾過する前の日本酒は、米や酵母等の小さな固形物が残っていて、少し濁っていたり、シュワシュワと微発砲を感じられたりすることもあります。
この小さな固形物を濾過することで、クリアな日本酒に仕上がるのです。方法としては、最近ではフィルターを通して濾過するのが一般的。
昔は活性炭を使用することが多かったのですが、旨味成分も多く取り除かれてしまうため、現在は主流ではありません。
フィルターで濾過を終えた日本酒は、綺麗な飲み口に仕上がります。
火入れ(ひいれ)
濾過した後は、すぐに1回目の火入れを行います。
濾過してクリアになっても、目に見えない小さな酵母は日本酒に残っているのです。そのままだと酵母による発酵が進み、味が変化してしまいます。
そのように味が変わるのを防ぐため、熱を加えて酵母を失活させるのです。
また、火落菌(ひおちきん)という、日本酒を酸化させて臭みを帯びさせる乳酸菌が入ってしまっている可能性があるので、それを死滅させるためでもあります。
「火入れ」という言葉から直接火にかけるような作業を連想してしまいますが、そうではなく、湯煎のような方法で60から65℃で低温殺菌をするのです。菌が死滅・失活し、美味しさは損なわない温度がミソ。
そうすることで日本酒を長く美味しく飲むことができます。
貯蔵(ちょぞう)
火入れの後は、熟成させるために貯蔵します。
貯蔵・熟成された日本酒は、まろやかな味わいに変化するため、飲みやすくなるのです。
火入れをしてから約半年から1年間、タンクの中でじっくり時間をかけて貯蔵します。
貯蔵をせず出荷する「生酒」と呼ばれるお酒もありますが、一般的に流通している日本酒は貯蔵されたものです。
同じタンクで作ったお酒でも生酒と貯蔵させたものを飲み比べると味に違いを感じます。それも日本酒のおもしろさのひとつなので、見かけたら飲み比べてみてくださいね。
調合(ちょうごう)
この工程では、熟成したお酒を、別のタンクの日本酒と合わせたり、加水(割り水)したりします。
合わせる理由は同じ造り方をしていてもタンクごとに微妙に味わいが変わるためです。
タンクの場所による気温差などが理由のひとつ。些細なことで発酵具合に微妙に差が出るようです。
また、日本酒はアルコール度数が0.5度違うだけでも全く違う味わいになります。
適当な味にするため、場合によっては加水して微調節していくのです。
この作業を調合と呼びます。このように、貯蔵した日本酒にブレンドしたり、加水したりして最終的な味を仕上げていくのです。
瓶詰め(瓶詰め)
さあ、いよいよ瓶やパックに詰める最終工程です。簡単そうに見えて、実はこの作業も重要。最後まで気を抜けません。
なぜなら、瓶詰めの段階でも味が変化・劣化することがあるからです。
たとえば、温度管理がきちんとされていないと味が変化してしまいます。
さらに、異物が入っていないか1本1本検品。厳しい検品にクリアできたお酒のみが出荷されるのです。
日本酒造りは最初から最後まで丁寧で繊細な作業ですよね。
「甘口」や「辛口」は作り方によって変わります
さて、日本酒には甘口と辛口があるのはご存知ですか?
味は人によって感じ方は様々ですが、一般的にブドウ糖が多いと甘口、アルコールが多いと辛口と感じます。つまり、日本酒に含まれるブドウ糖とアルコールの比率が関係しているということです。
日本酒は、仕込みの過程でお米(デンプン)→ブドウ糖→アルコールと変化していきます。ブドウ糖とアルコールの比率を表したものを「日本酒度」と呼ぶのです。 日本酒の裏ラベルに日本酒度が記載されているものがあるので、お酒を選ぶ時は見てみましょう。
「日本酒度−2」「日本酒度+3」など、マイナスやプラスで表記されています。
マイナス表記はアルコールへの変化が少ない、プラス表記は多いという意味です。つまりマイナスの場合は甘口、プラスの場合は辛口と覚えておきましょう。
日本酒の作り方によって甘口か辛口か変わるので、お好みの日本酒を見つける指標にしてみてくださいね。
美味しい日本酒を作るために欠かせない「原料」と「人」
これまで日本酒の作り方をご説明してきましたが、美味しい日本酒に欠かせない2つの条件があります。
- よい「原材料」
- 腕のある「人」
この2つがとても大事です。 お米と水が良いものでないと、いくら腕のある人がお酒を造っても美味しい日本酒はできません。つまり、美味しい日本酒には、よい原材料も人の技術も揃っているということです。
また、原料であるお米は農家がつくっています。
お米の土づくりから考えると日本酒になるまでは早くても1年かかります。熟成させれば2年ほどです。たくさんの時間をかけてやっと私たちが口にできます。
日本人は美味しいお酒を飲むために、労力と技術を磨いてきた歴史があり、日々技術をアップデートしていると思うと、じっくり味わわなければ作り手に申し訳ない気持ちになりますよね。
毎年数えきれないほどの日本酒が世に出てきていると思うと、その数だけ作り手の努力と想いが存在するということなのです。
いろんなストーリーをもった日本酒があるので、飲むときはラベルやチラシ、ウェブサイトなどを見てみて、作られた背景も一緒に味わうと、より一層楽しめるのでオススメですよ。
まとめ
いかがだったでしょうか。全部で12の工程を経て、日本酒は私たちの手元に届くわけです。
読んでみると実際に見てみたくなった方もいらっしゃったかと思います。
実際に日本酒造りや、酒米の田植え体験ができるプログラムを募集している酒蔵もありますので、気になる方は参加してみてはいかがでしょうか?
より深く日本酒や日本文化学び「日本酒ライフ」を楽しんでくださいね。
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